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ベンチャー企業分析

株主を顧客に、コストを利益に転換!福利厚生アウトソーシングの先駆け

■人材派遣大手パソナの社内ベンチャー第1号は福利厚生代行事業

福利厚生アウトソーシングの先駆けである「株式会社ベネフィット・ワン」。ベネフィット・ワンはもともと人材派遣大手であるパソナグループの社内ベンチャー第1号として立ち上がりました。
1996年にパソナと三菱商事の出資により発足し(当時は「株式会社ビジネス・コープ」、2001年に会社名を変更)、2004年にはJASDAQ、そして2006年には東証二部に上場を果たしています。総会員数は496万人(2010年9月)であり、シェア40%を占める業界最大手の企業です。以下に直近の業績を示します。

 2010年3月期 (百万円)
 売上      13,791
 営業利益    2,345
 経常利益    2,444
 時価総額   14,261(2010年12月20日現在)
 PER      9.34倍(2010年12月20日現在)


■福利厚生アウトソーシングの仕組みとは

現在では「CRM事業(パートナー企業の優良顧客確保に向けた支援サービスとして、会員特典コンテンツを企画・制作・運用)」、「インセンティブ事業(社員に支給される報奨金を現金ではなくオリジナルポイントとして蓄積・管理し、自由に使えるサービスを提供)」なども行っていますが、やはり主力事業は「福利厚生代行事業」です。

入会金・月会費を支払ってベネフィット・ワンの会員組織である「ベネフィット・ステーション」に各企業が加入をすると、その会員企業の従業員は、ベネフィットワンが契約している施設・サービスメニューを自由に利用することができるようになります。従業員はWebやガイドブックでメニューを選択し、ベネフィット・ワンのカスタマーセンターで申し込み・予約を行うという仕組みです。

この福利厚生代行事業には2つのコースがあります。
(下記料金は従業員数が11名〜100名の場合)

◇スタンダードコース・・・<従業員1人あたり月額350円>
             通常一般価格の10〜30%割引になる
◇ゴールドコース・・・・・<従業員1人あたり月額1,000円>
             スタンダードコースよりも割引率が高い、
             宿泊サービス利用時に施設利用料などが50〜70%割引になる

スタンダードコースは、いわゆる共同購入・仕入れのようなものです。ベネフィット・ワンは多くの顧客を抱えているので、ある程度まとまった数の送客ができると考えられます。また会費収入による原資もあるので、施設側とは価格交渉をした上でその分安く仕入れられます。仕入れ値のまま顧客に提供するので、このモデルではベネフィットワンの収益は会費のみです。

一方、ゴールドコースでは仕入れ値よりも安く顧客に提供しています。ベネフィットワンが一定額を負担しているのです。ただ、この仕組みでは、利用されればされるほどベネフィットワンの負担額が増すことになってしまいます。
そこで同社は、2001年頃から施設・サービス提供者側から手数料を得るというモデルを新たに取り入れています。施設によってこれらの収益モデルは異なるものの、ベネフィット・ワンは利用されるほど収益が上がる仕組みも取り入れることができたのでした。


■出資企業を顧客にしてブランド力・営業支援を獲得

中小企業でも大企業並みの福利厚生サービスが受けられるように、とはじまった当サービス。当初のターゲットは中小企業でしたが、思ったように売上は伸びませんでした。そこで大きく方針を転換。起死回生の策として中小企業ではなく大企業を狙いにいったのです。そしてこの転換が大きな成功を収めることになります。

90年代後半は、バブル崩壊により自社保有の保養所など福利厚生施設の維持に悩んでいた大企業が少なくありませんでした。このタイミングと合致したことで、日立キャピタルとの契約を皮切りに大企業からの受注が増え、ベネフィットワンの大きな躍進へとつながったのでした。
また、パートナーになりそうな企業、例えば日本生命や東京海上等に、株主になってもらうことで、ブランド力かつ営業支援も獲得。さらに顧客を増やしていきました。


■ベネフィット・ワンが提供している価値

本サービスが拡大してきたことで、規模に関係なくあらゆる企業が多様なメニューが取りそろえられている福利厚生サービスを利用できるようになりました。福利厚生に伴う煩雑な管理業務が軽減できるという点も企業にとっては大きなメリットです。
また、施設側にとっては、大量顧客を抱える媒体に掲載してもらえるので、集客のチャンスが広がります。通常より大幅な割引が必要なものの、「福利厚生」という名目があるため正規顧客にも示しがつきやすいといいます。

一方で、ベネフィット・ワンにとっては顧客が増えるほど購買力が上がるため、安価に仕入れることが可能になり、サービスメニューの拡大も可能になります。それがさらに顧客を呼び込むことになり、好循環となっています。
先行して大量に顧客を獲得できたことで、今でも業界トップシェアを占めており、後発企業にとっては大きな参入障壁を築けているといえます。

先にも述べましたが、これまでの福利厚生サービスであれば、通常利用されればされるほど運営側にとってはコストになってしまいます。しかし、ベネフィット・ワンは、利用されるほど収益も上がる仕組みを取り入れることができている点でユニークであるといえます。

「まとまった固定収入を原資に、共同購入で安価な仕入れが可能なモノ」
「利用されることがコストになる会費制ビジネスと手数料ビジネスの組み合わせ」

このような視点が本モデルのようなビジネス着想のヒントになるのではないでしょうか。

エムアウト  高野公美子
   
高野公美子