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ベンチャー企業分析

設立4年で上場!時間のミスマッチを解消した医師とMRをWebでつなぐサービス


■わずか4年で上場!医師とMRをつなぐ「m3.com」

グループ会社の1つである日本メディカルネットコミュニケーションズ株式会社が東証マザーズへの上場承認を受けて12月21日に上場、との発表があったエムスリー株式会社。同社は、30万人の医師パネルを保有するという英国の市場調査会社を買収したことでも先月話題に上りました。
19.6万人(2010年9月末)の医師が登録する日本最大規模の医療従事者専用サイト「m3.com」を運営するエムスリー株式会社は、2000年に設立され、その後わずか4年で上場しています。

m3.comは、医療に関連するニュースや文献などの情報、医師同士の意見交換が可能なコミュニティに加え、転職・求人情報まで提供されている、医師のためのポータルサイトです。エムスリー株式会社直近の業績は以下の通りです。

 2010年3月期
        (百万円)    (前年比)
  売上高    11,811      38.4%
  営業利益   4,803      20.4%
  経常利益   4,851      16.3%
  時価総額   114,225 (2010年12月6日現在)
  PER     58.85倍 (2010年12月6日現在)

m3.com内の、医師と製薬会社MRとの情報交換をサポートするサービス「MR君」を主としたマーケティング支援事業が、売上の半分以上を占めます。


■エムスリー株式会社の立ち上げ経緯

2000年9月に会社を設立し、同年10月に「MR君」の提供を開始しています。
もともとソニーコミュニケーションネットワーク(現:ソネットエンタテイメント)株式会社が医療関係者を対象にしたネットビジネスを拡充するために設立したのが始まりです。当時、ソニーコミュニケーションネットワークは「マイメディプロ」という日本最大級の医師のコミュニティを運営していました。MR君はそこに登録する医師を活用する新規事業として立ち上がったのです。

代表取締役社長である谷村氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身。ヘルスケア関連を担当しており、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社は谷村氏のクライアントであり、そのプロジェクト内で「医師とMRをWebでつなぐ」事業に可能性を見出していました。そして、実際に立ち上げることになった段階で、谷村氏にあらためて声がかかり、立ち上げメンバーとして参画することになったのです。


■製薬業界の営業効率を改善

たった1分の面談のために何時間も病院の隅で待ち続ける、というのが製薬企業の営業マン、MR。MRが活動する日中の時間帯、医師は診察に追われています。高いとは言えないMRの営業効率をITにより改善しようと、営業支援用システムへの投資を製薬企業各社で行ってはいたものの、ツールを改善したところで、医師にはMRの説明をじっくり聞く時間はなく、根本的な問題解決には至っていませんでした。

エムスリーはこのMRによる医師への訪問営業というプロセスに注目し、膨大なコスト(製薬企業のMR関連費用は1兆円以上といわれている)がかけられていたMRと医師との「時間のミスマッチ」を解消するサービスをMR君によって提供したのです。

Webサイト上に情報を掲載できるようにしたことで、医師にとっては自分の好きなタイミングで情報収集したりMRにアクセスできるように、MRにとっては具体的な課題を持って情報収集している医師に対してアプローチできるようになりました。
また、単なるMRからのダイレクトメールではなく、自分が認めているMR以外からは営業を受けたくないという医師のニーズを組み上げて、医師自身で許可したMRだけがアプローチできるような仕様とし、医師が主体となって情報を取捨選択できるようにしています。
MR君の契約企業は現在28社。製薬会社トップ10クライアントの平均売上は3.6億円です。


■医師人口の約70%を占有するメディアとしての価値

m3.comの19.6万人という会員数は、日本の医師人口が30万人に満たないことを考えると、驚きの数字です。これだけの医師数を占有していることで高い参入障壁を構築できています。「マイメディプロ」で2万人の医師を囲った状態からスタートできたことで、立ち上がりは相当早まったと考えられます。

また、エムスリーにとってクライアントである製薬会社(MR)が自ら、ユーザーである医師に対してMR君に登録するよう営業してくれるわけですので、エムスリーにとってこれほど効率の良いプロモーションはないでしょう。
医療業界は国民の医療費33兆をわずか30万人にも満たない医師がコントロールしているという極めて特殊な業界です。
その医師に直接アプローチできる手段を持っているm3.comは、メインのクライアントである製薬企業だけでなく、医療用品メーカー、病院、さらには高所得者層向けサービス提供企業などからも価値の高いメディアとして認識されています。

「営業コストが大きい業界」
「営業のステップで何らかギャップが生じている業界」
「上位クライアントで市場規模の大半を占めている業界」
「専門性の高い情報提供が必要な業界」

m3.comの着想にはこのようなヒントが隠されているのかもしれません。

エムアウト  高野公美子
    高野公美子