トップ > ベンチャー企業分析 > 写真業界を顧客視点ビジネスに変えたこども専門写真館

ベンチャー企業分析

写真業界を顧客視点ビジネスに変えたこども専門写真館

■こども専門の写真スタジオ「スタジオアリス」とは

「スタジオアリス」をご覧になったことはありますか。小さなお子様がいらっしゃる方ですと、実際に利用したことがあるという方も多いのではないしょうか。
このスタジオアリスは全国大型商業施設やトイザラスなどに出店している「こども専門の写真スタジオ」であり、株式会社スタジオアリスによって運営されています。

1992年にこども写真館1号店を出店。そして、1993年に株式会社スタジオアリスが設立され、新規出店を繰り返し、今では全国に382店舗あります。2002年にジャスダック、2004年に東証一部上場を果たしています。直近の業績を以下に示します。

     2009年12月期
    (百万円) (前年比)
売上   30,811 ▲2.0%
営業利益 2,950 ▲6.5%
経常利益 2,863 ▲4.3%
時価総額 13,594  (2010年12月17日現在)
PER 10.27倍  (2010年12月17日現在)


【サービスの特徴】
スタジオアリスには約500着という衣装がストックされていて、無料で貸し出されています。こども達はそれらの衣装を着て写真を撮影することができ、撮影枚数に限りはありません。そして、撮影データをその場で見て、好きな写真を選択することができます。撮影したその場でデータを見て、好きな写真を選択するという手法は今でこそ多くの写真館などで行われていますが、スタジオアリス設立当時、それはとても先進的な取り組みでした。


■写真業界をプロダクトアウトからマーケットアウトへ

そもそもスタジオアリスの成功は「こどもの写真に特化したこと」が第1歩であると思われます。
スタジオアリスの始まりは、創業者である本村氏が、1974年に設立した写真スタジオの日峰写真工芸にあります。DPE業を中心に行っていて、「日本一のDPE(写真現像)チェーンを作る」という夢のもと、15店まで出店を拡げていました。

しかし、思うように経営はいかず、失意の底にいた本村氏が突如思いついたというのが、こども専門の写真館でした。プロ撮影技術を持つ社員もいた中で、全くの素人2人の社員を起用し、店作りを任せました。素人なので、たくさんの枚数を撮影することになってしまいますが、その分、こどもの自然な笑顔を引き出し狙っていく、そしてお客様自身に好きなカットを選んでもらう、という手法を確立し、この手法が多くの人に支持されていきました。
それまで、写真の品質にこだわればお客様に必ず伝わると信じ、現像部分に重きを置いていた本村氏でしたが、お客様ときちんと向き合い顧客視点の経営に転換した瞬間だったのかもしれません。

スタジオアリスが従来の写真館とは異なる部分を簡単にまとめると以下のようになります。

≪従来の写真館≫

・価格が不透明
・カメラマンの技術ありきで自分で写真を選べない
・敷居が高い
・完成まで時間がかかる

カメラマンのこだわりが強く出る、供給者側の視点で展開されていた業界と言えるのではないでしょうか。

≪スタジオアリス≫

・価格の透明化
・気に入った写真だけプリント
・大型商業施設やトイザラスへの出店で敷居を下げる
・衣装のレンタル
・カメラマンは素人

こどもを笑顔にすることに特化顧客視点にこだわりそれまでの業界をかえていきました。

■競合ひしめくこども写真市場「スタジオアリス」の新たな取り組み

スタジオアリスでは先述の通り、無料で衣装を貸し出しています。
ドレス・着物をはじめ、キャラクターや芸能人デザインの服なども豊富に取り揃えており、それらを何着着ても、何バターンの写真を撮ってもらってもその時点での料金は3,150円。プリント1枚あたり6,000円程度なので、一見、他の写真館に比べて割安のようにも感じますが、ここで無料衣装貸し出しが効いてきます。
それぞれの衣装での写真を手元に残しておきたいというのが親心。また、アルバムなどのオプションも豊富で、結果として客単価が大幅に上がっていることが予想されます。

また、全撮影データを購入することは可能なのですが、所有権の関係で1年後以降とのこと。例えばそれが誕生日の撮影であれば翌年への来店動機になりますし、1回きりの来店で終わらせない施策の1つとしてあり得るでしょう。

少子化により、ターゲットであるこども達の人口は減少し続けていますが、こども写真市場はスタジオアリスによって需要創造が行われ、市場規模自体は緩やかではあるものの増大しています。
しかし、その分参入企業も大幅に増え、競争状態になっているのが現状です。
スタジオアリスも競合については大いに懸念しているようで、新たな取り組みをさまざま打ち出しています。

最近力を入れていることの1つが「お誕生日に七五三キャンペーン」です。こども写真市場の稼ぎ時は七五三であり、スタジオアリスでも売上の半分近くが七五三の時期です。そんな中、本キャンペーンはお誕生日のときに一緒に七五三のお祝いもしましょうという趣旨。
スタジオアリスにとっては、営業の繁閑を軽減するとともに、予約過多による売上減少を防ぐ効果があります。
また、お宮参り、百日祝い、ハーフバースデーなど、さらなる記念日需要を創造するとともに、着物レンタルやオリジナル衣装の開発製造卸など、新規事業も積極的に行い、後発企業に負けない新たなスタジオアリスブランドを築こうとする取り組みも盛んです。

顧客を絞り込み、顧客と向き合い、顧客を見ることで、それまでのプロダクトアウトな業界の考え方を変えた企業として捉えてみると、ただのこども専門写真館ではない姿が見えてくるのかもしれません。

エムアウト  高野公美子
   
高野公美子