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ベンチャー企業分析

顧客とともに事業を作っている好例

■小中学生向けアクセサリー小売業 サン宝石

サン宝石という会社をご存知でしょうか?
 お子様が小中学生の女の子という方は、もしかしたらご存知かもしれません。

同社は「女の子の夢と喜びをカタログやWebを通じて形にすること」をコンセプトに、子供のお小遣い程度でも買えるようにという戦略で、一点5円〜高くても数百円程度のアクセサリーを独自にデザイン・販売している山梨県の企業です。
小中学生の女の子達の間では、「サンホ」という愛称でかなりの認知度があるようです。

具体的な事業内容としては、以下のような展開を行っています。
 ・アクセサリー、雑貨、洋服のカタログ通信販売
 ・Webとモバイルによる e-コマース
 ・リアル店舗での販売(2009年6月時点)
  [Fancy POCKET](ファンシーポケット:小中学生向けブランド)
   宮城県:仙台店  東京都:原宿店|錦糸町店|光が丘店|田無店
  [Terra](テラ:高校生向けブランド)
   東京都:池袋サンシャインシティ店  山梨県:甲府店
 ・大手少女雑誌へのアクセサリーのSP(販売促進)商品提供

商品をかなりの低価格で提供し続ける同社は、中国で自社工場を持つなど、一般的な企業努力を行っているのはもちろんですが、その事業のユニーク性は別のところにあるようです。


【ターゲットとニーズを絞り込んだからこそ可能な事業運営】

[顧客自身が商品開発に参加]
サン宝石は、全国にサンホ調査員という300人の消費者モニターを組織しています。
このモニター制度は、毎年顧客に調査員募集という呼びかけを行ってモニターを募るもので、無償の形で運営されています。

例えば、このサンホ調査員に対して「原宿であなたがかわいいと思うものを3000円分買って送ってきてください。」というようなテーマを女子学生にメールで指示を出します。
すると、サン宝石には今の学生の流行を反映したような商品が届き、そこから自社商品のデザイン・企画に反映させていくというような商品開発活動を行っています。

企業サイドから見てみると、ローコストで顧客の声をダイレクトに反映するような商品開発活動ができることと同時に、結果的に顧客をロイヤルカスタマー化していくことにもつながり、売上アップにも貢献できているといえます。

モニターからしてみても、この活動に対して報酬が支払われるわけではないものの、「私が大好きなサンホの商品開発活動に参加している」ということがモチベーションになって、たとえ無償であってもがんばって役に立ちたいと思うわけです。


[デザイナー達は元顧客でありサンホのファン]
モニターから受けた消費者ニーズを、商品企画に落とし込んでいく、ある意味、事業の心臓部を担う企画・デザイン部門にもサン宝石の独自性があります。
それは、デザイナー達が皆、サンホの元顧客であり、ファンであるということ。
また、彼女達の年齢も20代前半と、顧客である小中学生に近い感覚を持てる人たちであること。この2つです。

これによって、とかく自社目線の企画先行になりがちな企画・デザイン部門が顧客目線に近い形での活動を、高いモチベーションを維持しつつ行うことができるというわけです。


[圧倒的な顧客基盤]
このような企業運営を30年続けていることで、同社の顧客は今では160万人いるそうです。

30年前といえば、CRMという言葉も存在しなかった時代ですが、通信販売事業が基礎になっているからこそ、結果的にこの160万人の顧客属性や購買履歴なども同社のデータベースにたまっているのではないかと推測できます。


【近年の業績】
このように、マーケットニーズを商売に上手く組み込む仕組みを構築できているように見える同社ですが、ここ5年ほどの業績(2004年9月期 - 2008年9月期)を見てみると、決して好調とは言えません。
売上高は2004年の約35億円から、2008年の25億円まで落としていますし、純損益についても、2005年、2007年、2008年については赤字となっています。

今年、2009年9月期の中間決算(08年10月−09年3月)は売上高16億1千万円、純損益は3000万円の黒字に回復しており、通期では売上高30億8千万円を見込んでいるとのこと。
 
この好調を支えている主な要素は、最近、力を入れている全国各地の百貨店やショッピングセンター(SC)で商品即売会を行う催事事業のようです。
自社の通販カタログで開催地域の会員に事前に告知するため「効率的に集客できる」ということがあるようです。

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阿野武士