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ベンチャー企業分析

日本一F1層を囲い込むTGCの仕掛け人(後編)

 ▼前編はこちら▼
 http://www.m-out.jp/venture/2009/10/tgcf1.html

2.ターゲットを絞り込む

『girls walker』立ち上げに関するメディアでの取材記事を読むと、同社は最初からF1層にターゲットを絞り、その後に彼女達が一番購買意欲を発揮するファッション・コスメを狙い、彼女達に最も支持されるコンテンツの表現でサービスを設計していった緻密な戦略も見え隠れします。

普通であれば、「こういうサイトがあれば便利なはずだ」という身近なニーズや、「このカテゴリに誰も進出してないぞ」という競合状況を鑑みて、まずやりたい(やれる)サービスを最初に考え、「そのサービスを誰が一番使うか」とターゲットを特定する順番でアプローチしている所が多かったのではないでしょうか。

スタイリッシュでエッジが利いたサイトデザインやコンテンツ制作、そして通販アイテムのセレクトを、少しでも違和感があるだけで支持されなくなりやすいF1層において、如何に支持されるカタチに仕上げられるのかを徹底的に考えぬいた点も語られています。

3.持続可能な競合優位性を保つバックエンドを構築する

後に競合優位性となる部分をどこと捉え、どう仕組み化していったのでしょうか。
恐らく語られない裏側部分も多数あるでしょうが、いくつか緻密な戦略が紹介されています。

≪クリエイティブな制作を維持する仕組み≫

まだ表現能力の低い画面の中で如何にクリエイティブな表現をするかは、方程式の確立されていない当時は非常に重要でした。クリエイターが多数個人サイトを立ち上げている状況であった非公式サイトにおいて、面白いサイトを紹介するメールマガジンも配信しながら、目についたクリエイターをスカウトしていくツールとしても活用していたそうです。

≪集客のためのメルマガ≫

今でこそ囲い込みツールとして利用されているメールマガジンも、当時は集客手段として使われていました。同社はその先駆者でもあります。
 
当時は迷惑メールもそんなに多くはなく、またケータイでメールマガジンを配信しているところが少なかったこともあり、ファッション・コスメ情報を無料で読める同メールマガジンは受信者からすれば有難い内容であり、友達にも転送してもらいやすい口コミツールにもなっていました。
また直接URLを入力しないとアクセスできない非公式サイトにとって、メールに記載されるURLは一種のブックマークとして機能することとなり、このことも同サイトの利用拡大を後押ししていました。

≪常に変化する技術環境を捉え、システム設計を固めすぎない≫

逆にサイト開発においては、常に変化する技術環境を見据え、あまりシステムの方向を固め過ぎず、決済システムも全てアウトソースのポリシーを貫いたそうです。
これだけでも、既に現在見られるようにIT企業としての成長ではなく、ブランドメディア企業として成長し続けている同社の方向性が垣間見られ、非常に興味深いです。
 

このように顧客を引き付ける部分を競合優位性と捉えて徹底的に持ち、逆に変化の激しいシステムの部分を自社では持たないという運用方式を仕組み化していった点がポイントとして挙げられます。
 
他にも決して語られてはいませんが、セレクトショップとして支持され続けるMDの仕組みや、TV・雑誌メディア連動の仕組みの部分にノウハウをため、競合優位性を作り上げている点も当然あると思われます。

4.顧客視点でプロダクトアウトな業界を革新する

同社は「ケータイで通販したい」という顕在化した顧客ニーズを形にした訳ではなく、まだ潜在ニーズの時点で市場を創りあげたタイプの企業です。
TGCにおいても、一度も手に触れない洋服をケータイで買わせることを世の中に浸透させるために行った一つの手段として見れば、プロダクトアウト(供給者視点)な展開の仕方と言えるかも知れません。

一方で、それまでのファッションショーは「いかにも体形の良いセレブのもの」「普段着としては先進的すぎてあまりに奇抜なもの」といったイメージであり、一般消費者にとって他人事の、供給者論理のブランド地位を保つためのショーだったと言えます。
 
その意味において、少なくとも同社は、日常使いでき、自分たちが購入できる範囲の服が実際に見られるという、「ファッションショーを消費者視点に革新する」ことを通じて、国内最大級のファッションショーとしての成功と、そのファッションメディアとして地位を磐石にしたと言っても過言でもないかもしれません。

一度マジョリティを取れば、優位性を持って数々のビジネスに展開が可能です。
同社も囲った顧客と培ったノウハウを軸に、脅威のスピードで新事業や新サービスを立ち上げています。
 
今後は次々に展開した事業の先行投資が回収期間に向かうのか、あるいは派生的に次々に立ち上げたサービスや関連会社の方向性・役割分担を一つの方向に再編していくのか、経営管理部分の展開も興味が沸くところです。

 
起業や新規事業において、まずはマジョリティを取るまでの事例として参考になったでしょうか。

【皆川博信】