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話題の商品 サービス分析

リアルなコンテンツプラットフォームのヒント

■コンテンツ担当者の悩み

「一生に何回ヒットコンテンツを出し続けられるだろうか?」
「運良く今年はヒットを出せたけど、来年の仕込みはどうしよう・・・」
あなたがメーカーやコンテンツ企業の商品企画担当者ならこんな悩みが必ずあるのではないでしょうか。あるいは一担当者の域を出て、コンテンツ企業としての起業や新規事業を考える際にも、商品企画から入る場合は必ずといって、「継続性」という壁に当たります。

実際にエムアウトにご応募頂くビジネスプランも、継続的に成長できるビジネスモデルというよりは、商品企画一本というプランが少なからずあるのも否めません。確かに一時は面白そうだけど、消費者が飽きてしまったり、マーケットのトレンドが変わってしまったらすぐ終わってしまいそう・・・。トレンドが変わった時に商品が対応できない場合は、決まって「いかに売り込むか?」=「プロダクトアウト」に変化してしまいがちです。そんな時に事業設計の段階で問われるのは「継続的に魅力的なコンテンツを生む仕組み」があるかないかだと思われます。もし仕組み化できれば、それ自身が競争優位性を保つビジネスモデルということになります。


■継続的にコンテンツを生み出す仕組み

そういったコンテンツ企業に対して、コンテンツを流通させる仕組みを持つ企業がプラットフォーム企業です。任天堂やNTTドコモ(モバイルコンテンツ事業)、楽天といった企業がそれにあたります。任天堂は自身も世界一のゲームソフト販売企業でありながら、同時にプラットフォーム企業でもあります。メインの収入は参入ソフトメーカーからのロイヤリティ(ソフト製造請負)収入であり、NTTドコモもコンテンツ企業からの回収代行手数料とパケット通信料収入、楽天は出店店舗からの出店料を徴収するビジネルモデルです。最近世間を賑わしているiPhoneアプリも同様のビジネスモデルです。

これらの共通点は、ユーザに受けないコンテンツを出す企業は自然と淘汰され、ユーザに受けるコンテンツを出す企業が集まる仕組みを提供している点です。細分化される様々なユーザのニーズに対して、それに応えられる健全なルールに基づくコンテンツ市場を中立的な立場で形成している点が「継続的に魅力的なコンテンツを生む仕組み」=「マーケットアウト」と言えるかもしれません。

確かにコンテンツ提供側も、プラットフォームを選ぶ権限があるため、プラットフォーム企業自身も魅力的な開発環境やユーザインターフェイスの発展等、競争優位を保つ努力は必要です。しかしながら、自身だけで提供していればいずれアイディアの限界が来るであろうコンテンツも、多くのサプライヤーで解決するため、そうそうに限界は訪れない点に継続性があると言えます。


■プラットフォーム=IT領域の話だけなのか?

しかしながらこれらのビジネスモデルは確かに魅力的だと言えますが、相応の技術力が前提となっていることも否めません。ではITではない領域で事業を立ち上げる場合、こういった思考は縁遠いものなのでしょうか。リアルビジネスの領域にも発想のヒントがありますので少し紹介したいと思います。


■累計2500万個生産したロングセラー商品「ベアブリック」

この記事を読んでいる皆様はベアブリック(BE@RBRICK)という大ヒットフィギュアをご存知でしょうか。
ベアブリックは株式会社メディコム・トイという企業が提供している、クマをモチーフにした体高70mmのブロックタイプのフィギュアです。2001年の発売以来、累計生産数2500万個に達し、メディコム・トイ自体は同商品を中心に年商34億円の企業に成長しているそうです。

同商品はクマをモチーフとしながらも、顔は目も口もない点が特徴です。
…と文章だけでは恐ろしいイメージを想起してしまいますので、実際にWEB(http://www.bearbrick.com/index.html)で見て頂くのが早いと思います。クマ型ロボット的なコミカルなフォルム(造形)に、様々なバリエーションのペイントを乗せることでコレクター心をくすぐって人気を博している商品です。また様々なキャラクターやブランドとコラボレーションし、ファン層を拡大しています。例えばベアブリックでgoogle検索するとそのバリエーションの多さやファンの多さが伝わるのではないかと思います。

単純にベアブリックをアイディア商品と捉えてしまえばそれまでですが、仕組みが確立されたプラットフォームビジネスだと捉えると非常に興味深い示唆がありそうです。以下にビジネス上のポイントを説明したいと思います。

≪「完成された造型×未完成のデザイン」=「継続性」≫

まず一点目は継続性です。
クマ型ロボット的な、コミカルでPOPなフォルムは完成されているものの、上に塗るペイントは色も顔も質感も制限されていないというある種の未完成さが「継続的に魅力的なコンテンツを生む仕組み」を生み出していると言えます。
実際に様々なデザイナーやキャラクター・ブランドとコラボレーションしており、素人目にも今後のアイディアに限界がなさそうに映ります。この「フォルムはFIX」「デザインは自由」という点が非常に重要です。ある程度キャンパスの形が制限されているからこそ、逆に発想がし易くなっていると結果的に言えるかもしれません。

事実、ライセンシーとして、ベアブリックに乗せるペイントのデザイナーやコラボレートするキャラクターを取りにいくことも当然ながら、逆に販促ノベルティとして企業側からOEMを請けることも多いようです。また、広く一般にコンテスト形式でデザインを公募し、そこから商品化するようなことも行っており、まさに様々な人が参加し易くなっている仕組みと言えます。
ここがベアブリックは継続的にコンテンツが生み出されるプラットフォームとして十分に機能している点になります。

また、ベアブリックは、googleがgoogleマップのAPIを公開することで様々なWEBサービスと組み合わさる仕組みや、昨今Mixiやモバゲーが自社内で完結してゲームを出すだけでなくオープンアプリとしてAPIを公開し、各コンテンツ提供者が自由にゲームを作れるようにしている仕組み等と非常に良く似ています。
これらは地図やゲームというフォルムを提供し、そこから発展させるサービスや中身をサプライヤ側が自由に加工して独自のサービスを完成させています。

「ある程度制限されたキャンパス」に「付加サービスを自由に足して新しいコンテンツやサービスを完成させる」というWEB上を賑わしているオープン化の流れを、まさにベアブリックはリアル版として提供していると言っても過言ではありません。デジタルの領域を出ても、こういった思想のリアルビジネスが今後も生まれてくるかもしれません。

≪フォルムをFIXしているからこそ生産が効率的に≫

二点目は生産性です。
「キャラクター一体一体の造型の細かさこそ命」というフィギュア業界の常識において、フォルムをFIXしていることは、ビジネスの観点からは生産性という利点が生まれます。金型が一つで済み、生産からペイントの工程が単一になることで、コストやスピードの点において非常に効率的になっています。
それは、元々同社が販売していたキューブリック(KUBRICK)という商品において、販促ノベルティとして短納期を要求された大変な思いから、フォルムをFIXし、デザインや質感で多様な表現が可能なこのベアブリックに至ったとも言われています。短納期を実現するこのFIXされたフォルムは、製造の容易さやコストダウンにも繋がり、結果的にビジネスモデル上においても重要な仕組みとして確立されているのでしょう。


以上のように、ベアブリックは「完成された造型×未完成のデザイン」を通じて「継続的に魅力的なコンテンツを生む仕組み」「生産性の高い製造の仕組み」が確立されており、ビジネスの観点からも非常に示唆に富む商品で、リアルの領域で発想するプラットフォームとしても非常に参考になります。

これは決してモノに限りません。適度にテナントを入れ替え、継続的に魅力を保ちながら協業でフロアを作っていく商業施設や、店舗フォーマットとブランドを提供するものの、仕入れる商品や売り場作り次第で店舗の形が変わるFC業など、プラットフォームとは広義で捉えれば決してIT領域だけの話ではありません。自らの努力で完成した土台(フォルム)と、未完成のデザイン(参加しやすい適度な自由度)。こういった視点は、非ネット領域で新規事業や起業を考える際にも、アイディアのさらなる発展に役立つのかもしれません。
是非ご参考下さい。

【皆川博信】