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事業立ち上げのポイント

第4回「実践編 その2(人材活用の仕組みづくり)」<前編>

これまで3回にわたり起業・新規事業立ち上げを支える人と組織というテーマで、そのベースとなる起業(企業)の理念、ミッション、ビジョンの重要性と人材調達のポイントについてお話をしてきました。
今回の「実践編 その2」では、これらの総仕上げとして、起業(企業)の理念に共感し、共通の価値観をもって集まった人材をいかに有効に活用していくかという「人材活用の仕組みづくり」について述べていきたいと思います。


■理念・ビジョンを実現し、事業の成功させるための人材活用

ここでもまず強調しておきたいことは、「人材活用」はあくまでも起業・新規事業立ち上げの理念やビジョンを実現し、その事業を成功させるための一つのプロセスだということです。ゴールは、事業の成功です。せっかく苦労して調達してきた人材も、自分たちの目的達成に向かって有効に機能しなければ何の意味もありません。

人材を活用するということは、調達してきた人材を事業の目的に沿って有機的に機能させることを意味し、「人材活用の仕組みづくり」とはこの人材が有機的に機能するための環境づくりのことをいうのです。ともすると、人を活用することは大事だということで、就業規則やルールづくり、評価の仕組みづくり自体が目的化してしまい、本当の目的を見失いがちです。しかし、あくまでもゴールは事業を成功させることで、そのための人材活用・環境づくりであるということを常に意識しておくことが重要です。


■頻繁な組織変更をためらうな

起業したばかり、事業を始めたばかりの段階では、変動要素も非常に大きく、理想の組織をつくるということがなかなかできずに試行錯誤を何度も繰り返すというのが一般的ではないかと思いますし、これを是としていかなければ、事業はなかなか上手く進んでいかないでしょう。
であれば、組織改変をためらったり、できもしない理想の組織を求める不毛な議論をしたりするのではなく、思い立ったらどんどん組織を変えていき、その変化に人をどう対応させるかを考えた方がポジティブなのではないでしょうか。
  
理想の組織づくりといっても、事業の種類や発展段階、構成人員によって、適切な組織は千差万別です。シンプルな組織、階層の少ないフラットな組織、フレキシブルな組織、末端に権限委譲されている組織など、一般的にいわれている「理想の組織」は山ほどあります。
ここで、どれがいいとか悪いとかをいうつもりはありませんが、重要なことは、自分たちの目指す事業と自分たちが有するリソースの中で、今の段階で一番いい組織とは何かをみんなで考え、それを共有しながら、組織づくりをすることだということです。

組織を頻繁に変えることが問題なのではありません。重要なのは、なぜそのように組織を変えるのか、その本来の意味と目的をきちんとメンバーに説明することを常に怠らないということです。
組織の説明を行うということが、すなわちその事業を通して何を実現したいのか、事業の目的、会社の存在意義といった経営者の思い、ビジョンを伝えることになるのです。メンバーと常にコミュニケーションを交わしながら、頻繁に変わる組織づくりの意図や経営者の思いを話したり、その代償として苦労をかけているメンバーの話を聞いたり、気持ちをわかってあげたりするという基本的なやりとりを交わすことが、何よりも経営者、創業者にとっては大事だということです。
そして、このプロセスを通じて、自分たちの組織に対するオーナーシップをメンバー全員にもってもらうことがポイントだと思います。


■メンバーの面倒を見る責任の所在を明確にする

もう一つ、特にスタートアップ時の組織づくりで大事なことは、誰がそのメンバーの面倒を見るのかという責任の所在を明確にしておくことです。先述の通り、事業立ち上げ時は組織が頻繁に変わり、それに伴ってメンバーの異動も頻繁に行われるのが常です。
そうなると、どうしてもメンバー自体が根無し草のような状況になってしまう傾向になり、特に面倒見や育成がおろそかになりがちです。また、悪い状況になってくると、思うような成果が出せなくなっているメンバーに対して、誰が採ったんだ、自分の組織には要らない、誰か面倒を見ろ、何とかしろ、辞めさせてしまえ、といった乱暴な議論になりがちです。
  
せっかく厳選して調達してきたメンバー(厳選して調達するところについては、前回、前々回をもう一度読み返してみて下さい)を自分たちの稚拙なマネジメントのせいで放り出してしまうのは、もったいないことこの上ありません。

そのためにも、そのメンバーをどう使い、どう育てるのか、何かあった場合に責任をとるのは誰なのかを明確にしておくことが大切です。
期間限定で誰か別の上司のもとで働くような場面があれば、その時の指揮命令権はその時の上司になるかもしれませんが、それはあくまでも期間限定のこと。そのメンバーを最後まで面倒を見る上司をきちんと決めておくということです。マズローの欲求段階説でも、人から認められたい、集団から価値ある存在として認知されたいという「自我欲求」は、上位から二番目に高い欲求として位置づけられています。
特に、創業間もない、まだきちんとした形ができあがっていないような組織においては、自分が本当にその企業に必要とされているのか、誰かが自分のことを見てくれているのかは、本人が非常に心配に思いがちなことです。

そこをきちんとフォローする仕組みがあれば、これほど心強いことはありません。ほんの少しだけ手間をかけたり、目配りをしたりするだけで、メンバーのやる気が大きく違ってくるということを認識していただきたいと思います。
そして、このメンバーの面倒を見る上司をきちんと決め、その上司が責任をもって部下を育てることこそが、人材育成の基礎となるのです。
  
そしてもう一つ、この面倒をみる人をきちんと決めておくということは、本当にそのメンバーがダメになって、その組織から切り離さなければならない引導を渡す場合にも効果があるということも知っておいていただきたいと思います。
そのメンバーに責任を持ち、日頃から手間隙かけて面倒を見ていれば、その上司に肩をたたかれたとしても、本人の納得感もずいぶん違ってきます。それが、あちらこちらの上司の間をたらい回しにされた挙句に、たまたま出くわした上司や人事の責任者から肩をたたかれたら、本人はいったいどう思うでしょうか。

このようになれば、いい加減な気持ちで上司はできなくなりますし、そこまで責任を負わされるなら自分が責任持って採用しようということで面接にも積極的に参加するでしょうし、気合の入れ方も変わってきます。このように、採用から日頃の労務管理、育成までが一貫していると、人のマネジメントはグッとやりやすくなるものなのです。日頃のコミュニケーションの重要性はここでもおわかりだと思います。


次回は、 「起業・新規事業立ち上げを支える人と組織 〜実践編その2(人材活用の仕組みづくり)」<後編>をお送りします。

コーポレー
トサポートグループ グループリーダー 寺田 研治郎
コーポレートサポートグループ    グループリーダー
寺田 研治郎