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事業立ち上げのポイント

第3回「実践編 その1(人材調達)」<後編>

新規ビジネスを企画する、準備する、立ち上げて軌道にのせる。そのプロセスの途中には様々な困難や課題が待ち受けています。まだ形のない新しい事業を順調にスタートさせ、さらに大きく育てていくためには、あなた個人の一人の力だけではなく、内外を問わず多くの方の協力が必要です。
「事業立ち上げのポイント」では、特別企画として連載で、起業・新規事業立ち上げ時に必要となる知識や実務について起業の専門家が解説していきます。

第3回目のテーマは、「起業・新規事業立ち上げを支える人と組織 〜実践編その1(人材調達)」の後編をお送りします。

 ※第1回「起業・新規事業立ち上げを支える人と組織 〜基礎編」はこちら
 ※第2回「起業・新規事業立ち上げを支える人と組織 〜実践編その1(前編)」はこちら


≪後編≫

■適材適所の人材ポートフォリオ

「理念」と「価値観」の共有化とともに、やらなければいけない作業が、事業を推進していくのに相応しい人材ポートフォリオの設計です。
どのポジションにどんなスペックの人材が必要なのか。それは直接雇用の社員なのか、それとも派遣社員やアウトソーシングのような外部スタッフなのか、を既存メンバーと組み合わせながら徹底的に考え、議論し、マッピングしながらそれぞれのピースに人を充足していくことが重要です。

特に、スペックを明確にしていく点においては、徹底的に議論し、言葉として共通言語化することで、より具体的なスペックやイメージをわかせることです。実際の業務シーンを想定し、どんな場面でどんな行動をとってくれる人がいいのか具体的に表現していってみるといいでしょう。
これは、スキル面についても同様です。
「○○の場面で、□□□の知識を使って、△△△△のような答えを導き出してくれる人」というように、とにかく具体的な行動レベルにまで落とし込むことがポイントです。そうすると、面接で候補者にする質問もおのずと決まってきますし、どんな答えをする人を採用するかもはっきりしてきます。面接担当者間のブレも少なくなりますし、軌道修正も比較的容易になってきます。

逆に、調達しようとする人材のスペックや期待値が明確にできないということは、自分たちのやろうとしていることが明確になっていないことの証しだと思いますし、それは自分たちのやろうとしている事業がまだ人材を調達するレベルにまで進捗していないということだと思います。


■外部リソースを有効に活用する

限られた資金やリソースで早期に事業を立ち上げなければならない起業・新規事業立ち上げフェーズでは、いかに効率的に人材を調達し、活用するかということがポイントとなります。派遣社員、業務委託・請負、アウトソーシングなどの外部リソースを有効に活用することは非常に効果的です。
この外部リソースの活用には、いくつかの利点があると考えられます。

1つめは、特に新規事業の場合、事業が上手くいかずにクローズを余儀なくされる可能性もありますから、そのリスク回避の観点からの外部リソースの活用です。余計な人材は内部に抱えず、極力外部リソースを有効に活用するということです。基幹メンバーはその事業のコアコンピタンスの部分に特化し、誰がやっても構わない領域を外部リソースに委ねるということになります。もちろん、餅は餅屋ということわざがあるように、外部リソースに委ねても問題ないという専門領域に関してのみ、即戦力として外部リソースを有効活用するということはいうまでもありません。

立ち上げ時の人的リソースは非常に限られていますので、自分たちでやれることにはおのずと限界があります。その観点で外部リソースを有効に活用するというのが2つめです。こう言うと、1つめと同じように思えるかもしれませんが、1つめでは機能面での外部リソースの活用について述べたのに対し、ここでは事業プランやビジネスモデルのプランニングにおける外部リソースの有効活用です。

新規事業は多くの場合、これまでの業界・企業が取り組まなかった領域、或いは取り組みたくても何らかの理由があってできなかった領域に対する商品・サービス提供ということになるのが一般的です。既存ビジネスの慣習やしきたり、しがらみにとらわれていては、なかなか新しい発想や常識からの脱却はできません。そのようなしがらみにがんじがらめになっているような人を採用し、創業メンバーとして組み入れても戦力として活躍できるかは非常に疑問なところです。
ただ、長年の経験で培ってきたその業界の専門知識やノウハウはやはりビジネスをスピーディーに立ち上げる意味では非常に重要なことも否定できません。とすれば、そのような人材は、外部ブレーンとして活用した方がより有効だということになるのではないでしょうか。

外部の力も活用しながら、したたかに、たくましく事業を立ち上げる、これが起業のポイントの1つです。そして、そのためには事業立ち上げ前の段階から、いかに幅広いネットワークとアンテナを張りめぐらせ、いざとなった時に備えているかが大きな差となって現れてくることになります。人材調達も、そこに至るまでの段取り、準備が肝要だということです。


■派遣スタッフの有効活用のポイント

ここで、派遣スタッフの有効な活用方法について、少しだけ触れておきたいと思います。筆者が人事コンサルタントとしてさまざまな企業で管理職などを対象に行ってきたマネジメント研修で最も多く質問を受けたのが「派遣スタッフの上手な使い方がわからない」「どこまで思い切って派遣スタッフに仕事を任せていいかわからない」というものでした。従来は、新入社員を採用して仕事をさせていたポジションが全て派遣スタッフに置き換わり、部下は派遣スタッフのみといった管理職もいたりして、これまで経験したことのない状況におかれた管理職がとまどい、どうしていいかわからないというなかなか難しい悩みです。

この質問に対しては、筆者はこう考えアドバイスをしていました。
人によって差はあるかもしれませんが、派遣スタッフも何らかの思いがあって派遣スタッフという形態で仕事をしているわけです。ですから、その思いを素直に聞いてあげて、その思いをできる範囲で仕事を通してかなえてあげるようにして下さい、と。
単に生活の糧として働いているのか、何か目的があって決められた時間で働ける形態を希望して働いているのか、何らかのスキルや経験を身につけたいと思って働いているのか等々、それらによって本人への対応も変わってくることなります。そのために、まず派遣スタッフ、一人ひとりときちんと向き合い、話し合うことが必要なのです。

確かに派遣スタッフは、業務領域を定めて、自社リソースでは足りない部分を補うために働いてもらうもので、契約以上のことは期待できない、やらせられないというのが大前提です。しかし、派遣スタッフも感情を持つ立派な人です。とすれば、一人前の人として普通に接し、扱うしかないというのが筆者の結論です。
本人との対話から、本人が何を求めているのかを明らかにし、それに従って対応していくしかありません。それをしないままに、変な遠慮や、先入観をもとにした対応は、お互いに不幸ですし、そのスタッフの持っているポテンシャルを100%引き出すことはできないのではないでしょうか。

これは実は派遣スタッフに限らず、正社員、契約社員、アルバイト、パートタイマー、程度の差こそあれ業務委託・請負、アウトソーシングなど、全てのポジションにあてはまることなのです。人材活用の一つのアプローチ方法として参考にしてみて下さい。


■あくまでも「人」

以上、「人材調達」についてお話ししてきましたが、調達する対象はあくまで「人」です。当たり前のことですが、人は十人十色。完璧な人などこの世に存在しません。最後はどこかで腹をくくって決断するしかありません。採った人で何とかしていく、すなわち採った人を自分たちで育成していくしかないのです。成長した人が事業を成長させていきます。
とすれば、これから採ろうとしている目の前の人材は、自分が責任を持って育てて成長させていく覚悟が持てる人材なのかどうかが、人材調達の最後の判断のよりどころなのだということを最後のまとめとして、今回の章を終わりにしたいと思います。

次回は、「実践編 その2」として、人の育成も含めた「人材活用の仕組みづくり」ついて述べていきます。

コーポレー
トサポートグループ グループリーダー 寺田 研治郎
コーポレートサポートグループ    グループリーダー
寺田 研治郎