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ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles

ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles
−アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは−
著:石塚しのぶ


多数のブログに引用・リンクされ瞬く間に何百人という人に感動をもたらしたという以下の話をご存知でしょうか。


彼女は病床の母のために靴を注文した。
7足中5足はサイズが合わなかったので返品しようと考えていた。
そんな中、母の症状が悪化し帰らぬ人となってしまった。
死後、もろもろの片付けに忙殺される中、1通のメールが届いた。それは、購入した靴の具合を尋ねるものだった。
「病床の母のために購入したが、その母が亡くなったのでバタバタしていた。必ず返品するのでもう少し待っていてほしい」ということを伝えると直ちに返信がきた。
「宅配の集荷サービスを送りますからご心配なく(正規のポリシーでは顧客自身が荷物を集荷場まで持っていかなければならない)」。この企業らしからぬ心のこもった対応に驚き、感謝した。
そんな翌日、自宅に花が届いた。それはその企業からで、お悔やみのカードが添えられていた。感極まってどっと涙がこぼれた。
そして彼女はこの出来事をブログに書いた。
「もし、ネットで靴を買うのだったら、ザッポスで買うことをお勧めします」
という締めくくりとともに。


これはアメリカで靴オンライン販売を行う「ザッポス(Zappos)」の顧客サービスの素晴らしさを示す逸話のひとつです。そして彼女の書いたブログは、多数のブログに引用・リンクされ瞬く間に何百人という人に感動をもたらしたそうです。


「幸せを届ける会社」ザッポス。


2009年7月にザッポスはアマゾンに買収されています。
年商190億ドル超のアマゾンが、やっと10億ドルを超えたばかりのザッポスを買収。大きいものが小さいものを飲み込むというビジネスの世界ではよくある話ですが、そこには単なる買収ということではないアマゾンの「真意」があるといいます。

ザッポスはアマゾンが喉から手が出るほど欲しがる「何か」を持っている。
その「何か」とは何なのか。
ザッポスCEOトニー・シェイ氏や、その他ザッポス社員に触れ、ザッポスの企業観を肌で感じている著者だからこそ伝えられるザッポスの魅力。
その魅力こそがザッポスが顧客を虜にしている最大の武器であり、今回ご紹介する「ザッポスの奇跡」はその魅力をたっぷりと伝えてくれる1冊です。


ザッポスは「最高の顧客サービス」で知られる会社になる、というビジョンを掲げていて、それを実現することが何よりも優先するべきミッションになっています。

最高の顧客サービスを提供するために肝となるのが、カスタマーセンター(コンタクトセンター)。
通常、多くのネット業者が電話による顧客対応を「コストの浪費」と捉えていて、フリーダイヤル番号をわからないようにしています。また、処理時間(電話対応〜後処理時間)を1件1件管理してオペレーターの生産性を測る一般的な指標にしていたり、売上ノルマを課したりすることも一般的でしょう。

しかし、ザッポスでは全ページに番号を堂々と表示し、24時間年中無休で運営。さらにはノルマもなく、対応に何時間費やしても構いません。ザッポスでの指標は「顧客を満足させるために、『普通』を超越するサービスを提供できたか否か」のみ。そしてそのためには対応者の判断で何をしてもかまわないというのです。


社員ひとりひとりが「最高のサービスを提供する」というザッポスの志をしっかりと身に付け、その上で、その実現に誇りを持ってアクションを起こしているからこそ、個々の判断基準で動いても企業としての方向がブレることなく、顧客に対しても多くの感動が届けられるのでしょう。


コンタクトセンターはコストではなく、投資であるというトニー氏。
マス・メディアへの広告掲載よりも、顧客へのサービスに対して投資を行うことで、顧客に感動を届けてそれがリピートや口コミにつながる。

ザッポスは1日に入ってくるオーダーのうち、75%が既存顧客からという脅威のリピート率を誇ります。また、「家族・知人に薦められたから」という理由でサイトを訪れる人は全体の43%にも上るそうです。

ザッポスが幸せを届けるのは商品を実際に購入した顧客だけでなく、著者のように関わった人全てに及ぶのではないでしょうか。本書を読んだ私もすっかりザッポスのファンになってしまいました。

コストを削減し、価格で勝負するのではなく、サービスによって顧客を感動させ、かつ売上も伸ばしているザッポス。

会社の幸せ、顧客の幸せ、社員の幸せ、取引先の幸せ、投資家の幸せ、すべてを実現させることは可能なのか。
ザッポスの目指す世界観をみなさんも本書で感じてみてください。ビジネスで人を幸せにするという経営の根本を忘れずにいたいものです。

エムアウト  高野公美子
    高野公美子

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